年収200万円で豊かに暮らす方法はある?リアルな現状を見る
年収200万円は高卒1年目の平均年収よりも約25万円少ない金額※1。月収では約16万円で、そのうち手元に残るお金(手取り)は約13万円〜13.5万円となります。
「年収200万円で豊かに暮らす」という書籍が話題になっており、年収200万円が当たり前の時代が来るのでは?というネット記事も見かけます。しかし、過去10年の年収100万円〜300万円レンジの推移を見てみると、その階級はほぼ横ばい。当たり前という言葉はその階級が基準であるかのような印象を感じますが、年収200万円は日本の平均年収と比べると低い水準にあります。
日本の平均年収は8年間で約10%上がっていますが、消費税や物価上昇などの影響で所得の増加を肌で感じられることは少ないです。流行病で給料が下がった業界もあります。
高卒賃金の推移(男女別)※2
男性
202万6千円→225万8千円
女性
197万5千円→212万4千円
豊かな暮らしの定義は個人に依存します。お金をあまり使わない方であれば、生活できないレベルでもないと思います。しかし、豊かな暮らしとは「不安」のない状態と考えることができます。その観点では、手取り約13万の生活は様々な不安があります。
- 急な出費が発生した場合どうするか
- 条件の合う住居は見つかるか
- 家庭を持つことは可能か
- 老後の生活はどうするか
- 将来的に両親の手助けはできるか
- 交際費や娯楽に使えるお金はあるか
年収200万円で貯金をすることも可能ですが、個人の状況によって貯金できる額は大きく変わります。節約のための生活スキルは必須であり、日々何かを犠牲にすることも多くなるでしょう。節約には限度があります。少し極論的ですが年収の増加に限度はありません。貯金を増やすには所得を上げることが効率的です。日本の構造上、所得の増加は勤続年数や企業の賞与に影響されることが多いです。つまり、年収面で将来の不安を少しでも解消したい場合、できるだけ早期のきっかけ作りが大変重要です。
※1 令和4年賃金構造基本統計調査の概況. 厚生労働省. 2023-03-17, p8, https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/dl/13.pdf.(参照:2023-10-27)
※2 令和4年賃金構造基本統計調査の概況. 厚生労働省. 2023-03-17, p15, https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/dl/13.pdf. (参照:2023-10-27). 「令和元年賃金構造基本統計調査(初任給)の概況. 2019-12-04, p2, https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/19/dl/02.pdf. (参照:2023-10-27)
年収200万円の手取り額を見る
「何がいくら引かれるのか」固定費の意識は現状理解に役立ちます。また、マネーリテラシーの向上は資産運用や節約にも役立ちます。
年収が200万円の場合は月収が約16万円。そのうち手元に残るお金(手取り)は約13万円〜13.5万円となります※3。
税金と保険の内訳
年収200万円
月収16万6千円
・厚生年金15,500円
・健康保険8,500円
・雇用保険1,000円
・所得税2,300円
・住民税5,300円
手取り13万3千円
※3 税金・保険料シミュレーション. https://www.mmea.biz/simulation/calculation/. (参照:2023-10-27)
年収・月給・手取りの違い
・年収 : 税金や保険料が引かれる前の年間収入(額面)
・月収 : 年収を12ヶ月で割ったもの
・月給 : 毎月の基本給に固定手当(役職手当、資格手当、住宅手当など)を足した月間収入
・手取り : 月給に対して税金や保険料が引かれた後に実際に支給されるお金
月収の20%〜30%は税金や保険料でなくなると考えておきます。次に所得に直接関係のある所得税について解説します。年収200万円の生活実態を知りたい方は先に進んでいただいて問題ありません。
年収200万円の所得税
年間の給与総支給額(年収)が200万円の場合、所得税額は2万8000円となります。
所得税額の計算方法
課税所得 × 税率 – 控除額 = 所得税額
課税所得とは給与総額のうち、実際に所得税率がかかる金額のことです。所得税率は給与全てにかかるわけではなく、社会保険料や基礎控除、給与所得控除や所得控除が差し引かれた分の金額、つまり、課税所得に対してのみ所得税がかかります。ちなみに、固定手当のほとんどは課税対象です。
年収200万円の課税所得額
年収200万円
−基礎控除48万円
−給与所得控除68万円
−社会保険料28万8000円
=課税所得55万2000円
各年収に対する所得税率(超過累進課税)
課税所得195万円以下 (5%)
課税所得195万円〜330万円 (10%)
課税所得330万円〜695万円 (20%)
課税所得695万円〜900万円 (23%)
課税所得900万円〜1800万円 (33%)
課税所得1800万円〜4000万円 (40%)
課税所得4000万円以上 (45%)
課税対象になる手当の一覧
・時間外手当 : 法定労働時間を超えて労働した場合に支給する割増賃金
・休日手当 : 休日に労働した場合に支給する割増賃金
・役職手当 : 役職者に対して支給する手当
・資格手当 : 会社が必要とする資格の保有者に対して支給する手当
・家族手当 : 扶養家族がいる労働者に対して支給する手当
・住宅手当 : 家賃や住宅ローンの補助を目的に支給する手当
・退職手当: 退職者に対して支給する手当
所得税は超過累進課税として年収が高いほど税率も高くなります。ひとまず、年収が200万円の場合は所得税が約2万8000円で、月当たり2,300円支払う。これだけ覚えておけば大丈夫です。
年収200万円の生活実態を見る
ここでは年収200万円の生活実態を確認します。年収200万円帯では、実家暮らしかどうか、固定費や負債がどれくらいあるか、 個々の状況によって生活レベルが大きく左右されます。
独身×実家暮らしの生活モデル
独身で実家暮らしの場合はこのような生活モデルが考えられます。
収入
・13万円
支出
・生活費 2.5万円
・食費 1.5万円
・交際費 1.5万円
・趣味娯楽費 1.5万円
・雑費 1万円
・貯金 5万円
実家暮らしでは月5万円程度の貯金が可能。10万円以上自由に使えるお金があります。しかし、奨学金などの返済、仕送りなど個人の状況によって固定費が多くなる場合もあります。外食や娯楽に散財せず、余剰の生活費は貯金に回す方が安心できます。一般的に手取り額の40%以上を貯蓄に回すと良いとされています。
一人暮らしなどを検討している場合は、手取り額の50%以上の貯金を心がけておくと生活をスムーズに始められます。
独身×1人暮らしの生活モデル
独身で1人暮らしの場合はこのような生活モデルが考えられます。
一般的に家賃は手取りの30%までに抑えることが理想とされています。年収200万の方であれば家賃4〜5万円が適正となります。
収入
・13万円
支出
・家賃 4.5万円
・水道光熱費 1万円
・食費 3万円
・通信費 0.5万円
・趣味娯楽費 1万円
・雑費 1万円
・貯金 1.5万円
年収200万円で1人暮らしは可能だが
年収200万円で1人暮らしをすることは可能です。しかし、貯金できる額は極端に少なくなり、日々の生活で節約スキルが求められます。全国平均の家賃5万円で住めるお部屋の相場は主にワンルーム・1K・1DKとなります。また、部屋の条件は絞られるます。バス・トイレ別、オートロック、室内洗濯機置場、2階以上。相当な郊外でない限り、これらの条件を全て揃えるのは難しいでしょう。
すぐにできる節約術
・自炊はもちろん、食材のまとめ買いをする
・コンビニの利用はできるだけ避ける
・格安スマホの利用
・冷暖房を極力使用しない工夫をする
東京都内での1人暮らしは難しい
全国平均の家賃は約5万円、東京都内では7万円と言われています。東京近郊での物件探しはかなり難航する可能性があります。家賃予算を上げたり、多摩地区など東京郊外で探すなどの工夫が必要です。
結婚は可能だが育児は不安
年収200万での結婚や子育ては現実的ではありません。扶養内のアルバイトで2人暮らしは可能ですが、子育てを考えるとどちらもフルタイムで働く必要があります。地域や個々人の状況にもよりますが、夫婦で生活するなら300万、子育てなら400万あたりの年収は必要になります。
車の購入はおすすめしない
年収200万で車の購入は可能です。しかし、仕事などで車の購入が必須でない限り、実家暮らしであってもおすすめはしません。
車にかかる維持費
車両本体価格(ローン)
保険料
駐車場代
ガソリン代
年収200万円をデータで見る
日本の平均給与額
日本の平均給与額は458万円です。雇用形態別では正社員の平均給与額は523万円、正社員以外が201万円となります※4。
平均給与額
男女平均 458万円
男性 563万円
女性 314万円
正社員の場合
男女平均 523万円
男性 584万円
女性 407万円
正社員以外の場合
男女平均 201万円
男性 270万円
女性 166万円
正社員と正社員以外の年収は約300万円のギャップがあります。現時点で正社員ではなく年収を上げたい場合、まずは正社員を目指すことが近道のように思われます。
※4 令和4年賃金構造基本統計調査の概況. 厚生労働省. 2023-03-17, p15, https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/dl/13.pdf, (参照:2023-10-27)
年齢別の平均給与額
年齢別の平均給与額は以下です※5。20代のうちは平均給与は比較的低く、年齢が上がるにつれて年収も上がっていきます。
20代の平均給与 331万円
男性 355.5万円
女性 301万円
20〜24歳の平均給与 273万円
男性 291万円
女性 253万円
25〜29歳の平均給与 389万円
男性 420万円
女性 349万円
30代の平均給与 443.5万円
男性 517万円
女性 335.5万円
40代の平均給与 506万円
男性 622.5万円
女性 340.5万円
次の章で記載していますが、年収100万円〜300万円の割合は25%以上です。平均給与を押し上げているのは、勤続年数が10年以上、平均賞与が100万円を超えやすいラインの企業規模(従業員500人以上)に勤めている、40代以降の層と考えることができます。
年収の増加は勤続年数や企業の賞与に影響されることが多いです。正社員だが将来に不安がある。将来の年収を少しでも上げたいと考えている場合、できるだけ長く勤められる従業員規模の多い企業に転職、就職することも近道です。
※5 令和4年賃金構造基本統計調査の概況. 厚生労働省. 2023-03-17, p21, https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/dl/13.pdf, (参照:2023-10-27)
年収200万円の人口の割合
令和4年の給与所得者(民間企業に限る)5,078 万人を対象とした調査では、日本において年収100万円〜300万円レンジの割合は26.8%となっています※6。年収200万円ちょうどのデータはありませんが、人口の約9人に1人が年収100万円〜300万円レンジで生活しています。
100万円〜200万円 12.7%
200万円〜300万円 14.1%
300万円〜400万円 16.5%
400万円〜500万円 15.3%
500万円〜600万円 10.9%
※6 令和4年賃金構造基本統計調査の概況. 厚生労働省. 2023-03-17, p23, https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/dl/13.pdf, (参照:2023-10-27)
年収200万円の年齢別の割合
年齢別における年収180万円〜219.9万円の割合は以下になります※7。この年収レンジは20代と60代に最も多い結果となります。最新のデータはありませんでしたが、年齢が上がるにつれて所得が上がり、60代以降で下がるという傾向は変わらないように思います。
男性(年収180万円〜219.9万円の割合)
20〜24歳 44.4%
25~29歳 23.6%
30~34歳 13.7%
35~39歳 9.3%
40~44歳 7.1%
45~49歳 6.4%
50~54歳 6.2%
55~59歳 7.4%
60~64歳 21.2%
65~69歳 24%
女性(年収180万円〜219.9万円の割合)
20〜24歳 42.1%
25~29歳 32%
30~34歳 23.9%
35~39歳 21%
40~44歳 19.6%
45~49歳 19.6%
50~54歳 19.4%
55~59歳 19.2%
60~64歳 23.8%
65~69歳 19.9%
繰り返しになりますが、年収の増加は勤続年数や企業の賞与に影響されることが多いです。30歳付近から年収180万円〜219.9万円のレンジが一気に少なくなることが分かります。一般的に、勤続年数が10年を超え、会社での立場も上がり給料や賞与に影響するからだと考えられます。
※7 平成29年賃金構造基本統計調査の概況. 厚生労働省. 2018-02-28, p13-14, https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2017/dl/13.pdf, (参照:2023-10-27)
日本の平均貯金額
日本の平均貯金額は、2人以上世帯は平均1,291万円で中央値は400万円。単身では平均871万円で中央値は100万円です※8。
2人以上世帯は平均1901万円で中央値は1168万円という調査もあります※9。同調査によると、2人以上世帯の半数近くが住宅や土地を中心とした負債を抱えています。負債保有世帯の平均値は1,528万円で、中央値は1,231万円です。
貯金額のデータは、調査方法や対象、考慮する項目によって、乖離や印象の違いが生じます。しかし、持つ者と持たざる者のギャップがあるのは事実であり、グローバル社会ではそれがさらに激しくなっています。一般的によく言われていることですが、年収が高くなれば貯金額も増え、貯蓄現在高が多い階級では、定期性預金よりも有価証券の貯蓄現在高の構成比が約2倍近くになっていることが確認できました。
投資を勧めるわけではありませんが、貯蓄を増やす意味では資産運用は強力であり、その際、元手となる資産の額が重要になります。運用資産額が高いほどリターンも大きくなり、複利ではさらに大きくなります。
金銭面で将来に不安を感じている場合、貯金と節約、年収を上げるための具体的な行動をおすすめします。
年収を上げるための具体的な行動
・キャリア形成を考える
・資格を取る
・転職をする
・副業をする
すぐにできる節約術
・自炊はもちろん、食材のまとめ買いをする
・コンビニの利用はできるだけ避ける
・格安スマホの利用
・冷暖房を極力使用しない工夫をする
毎月の貯金額の目安は実家の場合は手取り額の40%、1人暮らしは10〜20%です。年収200万の手取りは約13万です。実家暮らしでは4万円、1人暮らしでは1.5〜2万円を目標にしましょう。
貯金は心の安定につながります。病気や怪我、家電の故障、冠婚葬祭など、いざというときにはすぐに役立ちます。また資産形成、結婚や老後など将来にも役立ちます。また、できるだけ長く勤められる従業員規模の多い企業に転職、就職することは年収アップの近道となります。
※8 家計の金融行動に関する世論調査2022年(単身世帯調査). 金融広報中央委員会. 2022-12-21, p3, https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/tanshin/2022/pdf/yoront22.pdf, (参照:2023-10-27). 家計の金融行動に関する世論調査2022年(二人以上世帯調査). 金融広報中央委員会. 2022-12-21, p3, https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2022/pdf/yoronf22.pdf, (参照:2023-10-27)
※9 家計調査報告 貯蓄・負債編 2022年(令和4年)平均結果の概要(二人以上の世帯).総務省統計局. 2023-05-12, p4, https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2022/pdf/yoronf22.pdf, (参照:2023-10-27)
年収200万円から年収を上げる方法を見る
キャリア形成を考える
年収を上げたい場合は現状を変える行動が必要です。そのきっかけの1つとして資格取得があります。
下記は年収アップに効く「狙い目資格」として紹介されていた資格です。すべて「働きながら」「完全独学」「一発合格」が目指せる資格とされています。
・行政書士
・宅地建物取引士(宅建士)
・マンション管理士
・管理業務主任者
・ビジネス法務エキスパート®︎
・2級ファイナンシャル・プランニング技能士
・賃貸不動産経営管理士
・敷金診断士
・シニアライフ・相続アドバイザー
また、下記は資格手当が見込めてIT業界への転職に有利な資格です。
・IT関連の資格手当の相場(国家資格)
・基本情報技術者
・応用情報技術者
・ITストラテジスト
・ITサービスマネージャ
・プロジェクトマネージャー
・システム監査技術者
・エンベデッドシステムスペシャリスト
・ネットワークスペシャリスト
・システムアーキテクト
・データベーススペシャリスト
自分に合った副業・ダブルワークをする
年収を上げたい場合は現状を変える行動が必要です。そのきっかけの1つとして副業があります。副業で成果を出すコツは「目標を立てる」「地道に続ける」ことです。副業は収入を得られるだけではなく、立派な経歴や実績にもなります。副業を通して、自分の市場価値を上げることで転職にも有利になります。
下記はタイプ別のおすすめ副業として紹介されていたものです。
家の外で体を動かしながら働ける副業
・フードデリバリー
・スポーツインストラクター/トレーナー
・リゾートバイト/海の家
スキルなしからでも在宅で働ける副業
・データ入力・文字起こし
・カスタマーサポート
・オンライン秘書
将来性があってガッツリ稼げる副業
・WEBライター
・WEBデザイナー
・動画編集
・プログラマー
マイペースに不労所得を作れる副業
・ブログ運営
・SNSアフィリエイト
趣味から始められる副業
・ハンドメイド販売
・イラスト作成/写真撮影
・占
・旅行モニター/ツアーガイド
戦略的な転職・転職活動をする
年収を上げたい場合は現状を変える行動が必要です。そのきっかけの1つとして転職があります。また、年収を上げるには戦略的な転職活動が不可欠です。
市場性が高い成長業界に転職することは転職を成功させる秘訣です。今後衰退が予想される業界で年収アップは見込めず、自身の市場価値を高めることも難しいからです。個人のスキル、関心、経験に合わせて、以下のような需要の多い業界・業種から選択肢を検討することが重要です。
・営業職
・ITエンジニア
・Webマーケター
・データサイエンティスト
・動画クリエイター
・心理カウンセラー
・医療ソーシャルワーカー
・コンサルタント
転職の際は、転職サイトやエージェントを利用することをおすすめします。実際に転職しなくても、外部の目に触れることで自分の市場価値を知るきっかけになります。
自分が持っているスキルや関心事を伝えた上で、市場が求めるスキルを確認してもらい戦略的に市場価値を上げることもできます。そのような自己点検を繰り返していくと、現在の職場でも仕事のスタンスが変わります。
転職サイトやエージェントの利用を通して客観的に自分を知ることは、今後、転職してもしなくても自分にとってプラスになることは間違いありません。